北海道発 秋山財団ネットワーク形成事業「新しい公共」の担い手づくり


Vol.15 健康維持の家庭教師に(2010年4月号)

健康自給率向上の実技市民講座


 公益財団法人秋山記念生命科学振興財団では、北海道発の新しい公共の担い手(社会起業家)を育成して分野横断的な課題に対してネットワークを形成し、解決に取り組むプロジェクトを支援するネットワーク形成事業を2008年度から行っている。主眼は人材育成とネットワーク構築。助成期間は3年間。現在の助成対象は6プロジェクト。今回は、その中から遠友・いぶきが運営する「健康自給率向上の実技市民講座」(代表・丸山淳士五輪橋産科婦人科小児科病院名誉理事長)のこの2年間の成果、今後の展望などについて事務局幹事の伊藤誠夫さんに訊いた。(文責・堀武雄)

 

医療関係者・同業者も参加

気功家山部さんの技術を習得






 遠友・いぶきの「健康自給率向上の実技市民講座」は、福岡在住の気功家・山部嘉彦さんをメイン講師に迎え、市民を対象に山部さんが長年培ってきた健康維持の身体技法を伝授しようもの。

 「健康」は現代人の最大の関心事でありながら、地域医療は崩壊の危機に直面する一方、市民には自らの健康を自ら守る意識が乏しく、医師任せ・健康食品任せの風潮が蔓延っている。その中、山部さんの身体論を基本に気功や経絡を生かした施術、身体調整法などの技を習得し、家族や周囲の人々の健康維持に貢献する人材を育てようというのが「健康自給率向上の実技市民講座」の目的だ。

 08年7月に第1回の実技講座以来隔月で開催し、今年3月20日の講座で11回目。小平町での出張講座も開いている。

 この間、初年度に通年で受講した人はほぼ全員2年度目も受講しているほか、知り合いを連れてくるなどして2年度目の受講生は1・5倍に増えている。また、医療関係者が参加しているのも同講座の特徴の一つ。現代医療の主流である西洋医学と、気功などの東洋の施術とは一見対立関係にあるように見えるが、講師の山部さんは「西洋医学と東洋医学のどっちがいいかと比較するつもりも否定するつもりもまったくありません」と語り、伊藤さんは「いいとこ取り≠ナいいと思います。当講座では医療関係者もそういう意識を共有しています」。

 もう一つの特徴は整体師や気功家が参加していること。山部さんは自分の技を隠すのではなく、大いに広めたいと思っている。だから同業者の参加も歓迎している。すでに山部さんから習得した施術を取り入れ、実践しているという。

 

助成終了後の講座継続へ

「遠友むら」を設置


 秋山財団の助成期間は3年間。今年度が最終年度になる。継続的に自給率向上を図るには、健康教室などの形で社会起業化できれば理想的だが、まずは家庭教師≠ニして家族を対象に施術し、健康維持に役立てることで病院依存からの脱却を目指す。

 秋山財団からの助成金は、福岡在住の山部さんの旅費・宿泊費、会場費などに使われている。助成期間が終わった後はどうするのか。

 「2年目に入ったときから山部さんの好意で通常の実技講座の前に無料の筋診断講座を開いていて、ほとんどの人が参加しています。実技講座終了後も続けてほしいという要望が強いので、勉強会を立ち上げようとしています。また、会場となっている新栄倶楽部(札幌市東区北3416新栄セコンドビル)の近くにお住まいの方々に参加を呼び掛け、『遠友むら』という集まりを開いています。いずれも助成期間終了後の講座継続のための種まきです。最後の1年で形にしたいと思っています」

 

自分の可能性・潜在力に頼れ

NPO法人福岡気功の会代表・山部 嘉彦 さん




 3年で仕上げるという目標で言えば、1年〜2年目で伝えるべきものを伝え、次に伝えたものを身につけさせるわけで、一人ひとりの力量・技量をしっかり見ていくようにしたいと思っています。

 本当に幸いなことに、ほとんど「落伍者」が出ていません。これは本人の熱意、やる気の現れであるとともに、伝え手である私の思惑や技量水準がほどよいものであったことを示しています。今後はあまり詰め込まずに、熟成していく、熟練していく工程に入っていきます。

 筋診断にほとんどの受講生が関心を示してくれたことは思いがけない収穫です。健康を作るには、診断と治療(調律)の技術が不可欠ですが、診断は問診と不問診の技術が不可欠なのです。

 問診というのは、患者からの訴えを主として判断する方法で、不問診というのは患者の身体に直接アクセスして身体の事実を把握する方法です。

 筋診断はその不問診のプロセスで、患者自身が自分の情況をその場で知ることができて面白いと感じるのでしょう。このくらいなら、自分にもできそうと感じたのかもしれません。もしそうだったら、その可能性をぜひとも育て上げて一人前にしてやりたいと思います。

 今後は若い世代にいかにアプローチするかでしょうね。若い人たちには、やはり、思考の転換でしょう。常識の破壊です。モノやカネに頼るのではない、自分と自分の可能性・潜在力に頼れというメッセージを届けて行きたいと思っています。(寄稿)



 
 

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