北海道発 秋山財団ネットワーク形成事業「新しい公共」の担い手づくり


Vol.14 協働の場づくりを支援(2010年3月号)

協働の場づくりを支援

 

 2008年度にスタートした秋山財団のネットワーク形成事業。市民団体等が行う他の活動主体とのコラボレーションを対象に3年間にわたって助成するもので、初年度に5団体、2年目に1団体が認定を受け、活動している。第1期助成対象の5団体は、新年度が最終年。仕上げの年を迎える。そこで今回は、同財団理事長の秋山孝二さんに、ネットワーク形成事業の狙いと展望を訊いた。

 

 公益財団法人秋山記念生命科学振興財団理事長

           秋山 孝二 さん



研究助成・市民活動助成

ネットワーク形成の3本柱


 秋山財団は2010年度、創立25周年を迎えます。創立以来、研究助成を実施してきましたが、地域にも貢献したいと考え7年前から市民活動助成を始めました。助成したお金が本当に役に立っているかどうかを検証しながら一歩一歩進めようというのが当初の理念でした。

 始めてみると、これでいいのだろうか、という想いが毎年のようにありました。あるところに植樹をする。次の年には別のところに植樹する。助成をし続けなければ活動が成り立たないのではないかという疑問が生じました。もう一つは、当財団のような民間の財団がやらなければならない支援なのか、ということです。本来支援すべきセクターが支援していないから当財団に助成を求めるのではないかということです。

 活動主体は様々ですから、助成をした年は良くても次年度以降はどうするのかという不安もありますし、助成のお陰で面白い活動ができたという声は聞きますが、理事や評議員からは「活動している人が面白かったというのはいいが、社会に対しての貢献度はどうなのか」という疑念が出されたり、あるいは、支援した2年後に連絡してみたらもう解散してしまっていたという団体もありました。

 そこでまず、時間軸として単年度助成でいいのかどうか。3年あれば1年目で仕掛けをし、2年目に活動し、3年目にまとめに入って、次へのステップを築くことができる。そういう前向きな議論をしました。また、個々の団体本来の日常の活動は自力で行っていますから、当財団としては、活動主体が外部とコラボレーションすれば次のステップに進めるが、そのための費用がない、そういうところを支援したい。それがネットワーク形成事業です。研究助成、市民活動助成と合わせて当財団の助成活動の3本柱になっています。

 

申請・報告が簡便で使い勝手のいい制度


 助成金は旅費・交通費などに使われています。行政による助成の場合、税金だから、という理由で人件費や交通費には使えないことが多い。当財団のネットワーク形成事業の助成はそうした縛りのないお金です。

 当財団の助成は民間財団ですので使い勝手がいい。申請業務や報告業務が簡便です。助成金を有効に使っていただきたいので、細々とした証明書類なども要求していません。また、助成金はすべて前払いです。活動が終わって新年度に入ってから1ヵ月も入金がないというのでは、持ち出しの期間中のファイナンスが必要になりますから。

 知恵を絞って新しい財源を捻出し、これらの課題を一つずつ解決してネットワーク形成事業を組み立てました。

 当財団の理念としてはネットワーク形成へ向けてのコラボレーションに対する助成という想いでやっているのですが、そういう方向性があまり見られない活動もあります。2011年度に新たな助成対象を公募しますが、その際の課題と考えています。

 支援先がどういう現場なのかを知りたくていくつかの活動に参加しました。社会起業研究会(代表・小磯修二釧路公立大学教授)では、北大公共政策大学院の菅正広教授のマイクロファイナンスの講演、それからレスポンスアビリティの足立直樹さんのCSR(企業の社会的責任)についての講演を聴きました。釧路にも行きましたが、若い担い手が育っています。

 十勝イノベーションフォーラム(代表・鈴木善人リープス社長)が行っているアースカフェに何度か参加しました。そのほか、ワークショップにもときど参加しています。活動自体はとても面白い。ただ、ネットワーク形成につながるかどうか、検討の余地があると思います。そういう検証も大事です。

 

3年間でステップアップ

成果抱え次の展開を期待


 それぞれの団体が3年間の活動を組み立てているので、この2年間、勉強会や研究会、ワークショップを重ねることでかなりの材料が手元に集まっています。そこからいくつかの成果物が出てくると思います。それを自分たちがどう背負っていくかが課題です。ネットワーク形成事業は協働の場づくりへの支援ですから、その中でそれぞれがステップアップできていれば、次の展開はそう難しくはありません。

 お陰さまで、ネットワーク形成事業についての問い合わせもいくつか来ていますので、来年2月に行う2011年度の新規公募でどんな活動主体がどんなテーマで応募してくるか、大いに期待しています。

  

inserted by FC2 system