北海道発 秋山財団ネットワーク形成事業「新しい公共」の担い手づくり


Vol.9 健康維持の技術を習得(2009年9月号)

遠友・いぶき「健康自給率向上の実技講座」

 遠友・いぶきが実施している健康自給率向上の実技講座」は、福岡在住の気功家・山部嘉彦さんをメイン講師として、自らの健康を自ら獲得、維持する方法を学び、実践し、周囲に伝えて行こうという趣旨で、昨年からスタート。初年度は第1期として6回の実技講座を実施した。今年度は第2期。去る7月18日、第1回の実技講座の様子をレポートする。





電池を握って身体を変える


 札幌新道の北側、札幌市東区の新栄倶楽部を会場に、20人ほどの参加者が集まった。
 「健康自給率」とは、自らの健康を自ら獲得、維持しようということ。「健康」は現代の日本人にとって最大の関心事だが、地域医療は崩壊の危機にある一方、医者任せ、健康食品頼みの風潮が否めない。山部さんの気功家としての20年のキャリアの中で培ってきた健康維持の技を多くの人に習得、習熟してもらい、「健康自給率」を向上させるのがこの講座の狙いだ。
 この日はまず、五輪橋産科婦人科小児科病院名誉理事長の丸山淳士さんがゲスト講師として講演。新渡戸稲造著『武士道』を題材にユーモラスな話題で会場を盛り上げた(別稿)。
 山部さんの実技講座では、単4乾電池を使用。「電池を握れば身体が変るという実験です」と言って始まった。まず、動診。自分でできる身体の動きの診断だ。ここでは単純な前屈をやってみる。指先がどこまで届くか。それを覚えておき、今度は掌に電池を握ってやってみる。+と−の向きを変えて、右手と左手に持ち替えて、都合4通りのやり方を試す。電池を握る前と後で身体の柔らかさが変化したら、身体の調子を整えるのにこの方法が使えるかもしれない。
 もう一つの動診は、身体の捻り。下半身を動かさないようにして、上半身だけを捻ってみる。左右両方向を試し、稼動範囲が狭い方を採用。前屈と同じように電池を握り、右手・左手、+−の向きを変えて4通りを試してみる。電池を握った後で稼動範囲が大きくなっていれば効果ありだ。
「電池なんか握っても効果はないと思い込んでいる人は変らないかもしれません。どんな薬でもアドバイスでも、効かないと思い込んだら効かなくする力を人間は持っています。逆に言うと、『鰯の頭も信心から』と言うように、どんなことでも信じてしまえば身体は変ります。電池一つで変るか変らないかは、その人が素直かどうかにかかっています。ただ、体質もあります。変化がないからと言って、自分は鈍いという烙印を押す必要はありません」
「電池を使うのは、電池に電気的エネルギーを持っていることをみんなが知っているからです。わかっているものを使うことに意味や面白さがあるんです」
 ひと通り試した後、参加者に効果の有無を尋ねると、効果があったという人が十数人に上り、「変化がなかった」という人はたった一人しかいなかった。


自分を変える力を自分自身で持つ


 次の実技は肩こり。まず右手で左肩を触り痛いところを探す。次に左手で右肩を触る。右肩と左肩で痛みが異なるので、より痛い所を人差し指でぐりぐりと触る。次に中指で触ってみる。
「指を変えることでかなり劇的に傷みが変ることがあります。これは手にも電気があり、指によって電気的な性質が違うからです。人間の身体にはこのように簡単なことでころっと変る性質があります」
 痛い所を抑えたまま、反対の手に電池を握ってみる。+と−を変えてみる。会場のところどころから「痛みがなくなった」という声が上がった。変化がない場合は、肩を抑えている方の手に電池を握ってみる。
「電池を握ってもんでいるうちに筋肉全体に電池の効果が出てきて楽になることがあります」
 ボタン電池を使う方法もあるという。親指の付け根のところに合谷というツボがある。ここにボタン電池を貼ることで肩こりに効くことがあるそうだ。
「ただ、それは肩こりの状況を変化させたということであって、肩こりを治したということではありません。肩こりの原因はいろいろありますが、一番大きいのは食べすぎです。食べすぎという原因をそのままにして、電池を使って楽になったとしても、一生電池とともに生きていかなければなりません。それではだめです。自分自身を変える力を自分自身が持たなければなりません。そのきっかけとして電池を使うのです」
 「健康自給率向上の実技講座」は昨年度、第1期として2ヵ月に1回、計6回の講座を実施。今年はこれが第1回になる。
「1回3時間ですから6回で18時間にしかなりません。この3時間も重要ですが、大切なのはその間のインターバルです。3時間で得られたものを次の講座までの2ヵ月間で自分のものにしていくことです。そのため今年は宿題を出そうと思います。身に付いたことに自信をもった形で再会できれば2年目グレードアップができます。自分がまず健康になる。健康が崩れたときに自分でなんとかできる範囲を広げていく。もしそれでだめだとしても、医者や治療家に頼りきるのではなく、ここまでだったら自分でできる、それを医者や治療家に手伝ってもらう。そういう主客逆転の形にできればいいと思います。そして2年目は自分が健康になる知識や技術、情報だけでなく、家族や友達に自分ができること、指圧やマッサージなど安全、確実で効果のある方法を身につけることによって広がりを持たせていきたいと思っています」
 なお、「健康自給率向上の実技講座」に関する問い合わせ、申し込みは、北海道総合研究調査会『しゃりばり』編集室・大沼芳徳さん(札幌市中央区北4条西6丁目毎日札幌会館3階、рO11・222・3669)まで。


新渡戸稲造『武士道』と現代お産事情

五輪橋産科婦人科小児科病院名誉理事長 丸山淳士さん




 新渡戸稲造の『武士道』は、新渡戸が外国にいたときに「日本はどういう宗教の下に暮らしているのか」と聞かれ、日本人みんなが信条とする共通の宗教はないが、生活の基本や道徳観念は武士道に基づいているとして書いたものです。世界二十数ヵ国で出版されベストセラーになりました。
 全17章で、第1章から武士道とは何かということが書かれています。士農工商の身分制度の下で、武士は下の人間の模範になるべき存在であり、日本の生活のほとんどは武士道を基本にしている、と新渡戸は言っています。
 「義と勇は武士道の双生児である」
どっちが欠けても武士にはならない。
 勇とは決断し実行することをだと言っています、義とは義理であり人情です。人の正路、正しい道です。正義の道理こそ人間が生きる一番の基本であり、義は人間の背骨であると言っています。正義の義は生きるための社会の基本たるべき道筋である。義を見てせざるは勇なきなり。勇気は義により発動されたものでなければならない。
 第6章には、人と共に喜び人と途主に泣けるか、これを礼というと書かれています。礼は相手に対する思いやりを目に見える形で表現することを言います。
 日本人の心底にあるものは武士道に集約されるんじゃないかと思います。
 今、産科の医者は絶滅危惧種です。昔は日夜寝る間もなく働いて苦労をしても、「ありがとう」「先生のお陰です」と嘘でも言ってくれたら報われたんですよ。今は「取り上げ方が悪い」とか「言葉遣いが悪い」と言われます。そして後から弁護士が来て、証拠保全とかやられる。とてもじゃないがやっていられないということで、若い人はまず産科医にはならない。今、産科に入ってくるのは女医さんばかりで、9割にもなります。
 しかし女医さんになってもいまの実働は3割。出産や育児のためです。医学部を卒業するともう30近いんです。卒業して一番脂が乗っているときに出産と育児です。
 最近、こういう例がありました。茶髪が変色したような髪の色で、眼は青いんです。カラーコンタクトを入れてる。身体中輪っぱ(ピアス)だらけ。へそや小陰唇にもぞろぞろ付いているんですよ。これは黴菌の巣になる。しかも電気メスを使ったら全身から火を噴きますね。
 それは本人だからいいとして、1ヵ月健診にきたら、赤ん坊がチンチロリンの毛で、耳に穴を開けて輪っぱをぶら下げて、眼を開いたら青いんですよ。1ヵ月の赤ん坊にカラーコンタクトを入れている。虐待ではないかと私は思うんだけども、本人は「かわいいから」と言っている。
 旦那さんが立会い分娩を希望してきます。医学の知識はなくても、最低限のマナーがあればいいのですが、いきなり分娩室に飛び込んでくる。「ちょっと待って下さい」というと、「なんだこの野郎、訴えるぞ」と来る。
 武道では最初に礼を習います。それが最小限のエチケット、生活の基本になります。
 最近、大学で便所の中で飯を食う人が増えている。便食というそうです。食堂で一人で食っていると友達がいないと差別されるからトイレで食うんだそうです。最近の人は食べていいものといけないものの臭いの区別が付かないんじゃないか。自分で自分の命を守る手段がまったくできていない。
 ですから「健効率向上の実技講座」は二十歳以下の若い人に広めていただきたいと思っています。
 

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