北海道発 秋山財団ネットワーク形成事業「新しい公共」の担い手づくり


Vol.4 「生命」としての地域 社会起業研究会(2009年4月号)

 健全な地域の発展を目指すには、既存の政府から与えられる政策メニュー・政策モデルではなく、地域独自の創造的・持続可能な地域社会システムの構築が必要となる。社会起業研究会(代表・小磯修二釧路公立大学学長)では、生命としての地域を健全に守りながら持続的な発展を図ることを目的に、地域の環境、食、健康、エネルギーの分野に関わる事業活動の展開可能性を探っている。(文・堀武雄)






地域の問題解決を市場メカニズムで


 近年、CSR(企業の社会的責任)などの取り組みに見られるように、民間企業による社会的公器の役割としての社会貢献・責任活動が重視される潮流がある一方で、NPOや市民団体などによる社会公益活動については安定した基盤に支えられた継続的な事業システムへの転換が求められている。政府部門でもこうした動きを支える施策が始まっており、民間、市民、行政のレベルで「社会起業」に向けての関心が高まってきている。創造的・持続可能な地域社会システムを構築するには、このような潮流を融合させながら「社会起業」に向けての取り組みが幅広く展開される地域社会の実現を目指すことが大切になる。
 社会起業研究会では、こうした問題意識のもと、研究、行政、民間、市民活動に関わるメンバーを募り、研究会活動を核にしながら、地域社会の課題を市場メカニズムで解決していくような斬新で実践的な社会起業の事業化を目指す。
当面の活動は、社会起業研究会(講演など)の開催、先進事例調査を通じての人的ネットワークの形成と事業化に向けた萌芽を発掘することに主眼をおいている。秋山財団の支援事業という性格から、生命としての地域を健全に守りながら持続的な発展を図ることを目的に、地域の環境、食、健康、エネルギーの分野に関わる事業活動の展開可能性を探っていく。そこで重視されるコンセプトは「地域循環」「地域連携」「柔軟な仕組み」。北海道からの先駆的発信を目指している。


コラボレーションで生まれる新しい芽


 これまで2回の研究会を開催、それぞれ40〜50名が参加したほか、先進事例調査も進めている。
2008年7月の設立記念講演会では、レスポンスアビリティ社長でサスティナビリティ・プランナーの足立直樹氏が「本物のCSRを目指して〜持続可能な社会のために企業ができること〜」と題して講演。足立さんはマレーシアの熱帯雨林の中で植物を調べる研究者だったが、帰国後は「持続可能な社会の基礎をつくり、次の世代に手渡すこと」を使命に、企業向けのCSRコンサルティングなど幅広く活動している。
 11月の第2回社会起業研究会では、北海道大学公共政策大学院教授の菅正広氏が「北海道から日本のマイクロファイナンスを始めてみませんか?〜社会起業が変える内外の貧困・格差〜」と題して講演した。マイクロファイナンスとは、貧しい人々への金融サービスを意味するが、開発途上国の貧困への支援だけでなく、日本国内の貧困に対しても有効な手段になり得るという。
 代表を務める小磯さんは、社会起業研究会ついて、「基礎的な調査研究を通して人材育成とネットワーク形成を図ることで北海道の新しい芽を導き出して行きたい。すでに社会起業の取り組みを実践している方、実践していきたいという意欲のある方、関心のある方々が社会起業研究会に集まり、参加者の間でネットワークができ、仲間内で問題意識を共有し、そこからコラボレーションが始まる。それが北海道発の社会起業の展開の一助になればと考えている。初年度の2回の研究会開催で場づくりの手応えがある。いろいろなテーマについてオファーがあるので、次年度以降、取り組みを進化させつつ続けて行きたい」と語っている。

 

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