北北海道発 秋山財団ネットワーク形成事業「新しい公共」の担い手づくり

Vol.1  社会起業家を育成 秋山財団理事長 秋山孝二さん(2009年1月号)

社会起業家を育成

 秋山記念生命科学振興財団は、2008年度から「ネットワーク形成事業」への助成を新設した。初年度5つのテーマを採択。すでに活発な活動が行われている。今回からシリーズで同財団「ネットワーク形成事業」を紹介する。第1回は「ネットワーク形成事業」の意義。





固有の自然を備えた北海道

「生命の場」の共同体の一員


 財団法人秋山記念生命科学振興財団は、鰹H山愛生舘創業100周年を4年後に控えた1987年、当時4代目の社長だった秋山喜代氏が個人の出損金2億円で設立した。萌芽期にあった「生命科学」の基礎研究を促進し、成果を応用技術へ反映させることで、新しい社会開発の方策を模索できるとの観点から、特に地域開発の歴史が浅く、経済の低迷する北海道における科学技術、研究開発の振興、関連事業の創出、道民福祉の向上に寄与することを目的とした。

 設立に携わった現理事長の秋山孝二氏は、「固有の自然を備えた独自性を持つ北海道という生命の場に共に住む共同体の一構成員として、切り離されては生き得ない人材の育成を最高の価値としています」と財団設立の志を語る。「北海道」という地域と「生命科学:いのち」がテーマだ。

 設立当初から研究助成、5年前から社会貢献活動へも助成。助成対象を公募し、独立した選考委員会が公正に選考する。08年末までの累計の助成実績は秋山財団賞を含めて913件、総額6億750万円に達している。

 ただ、選考が公平であるが故に、ともすれば総花的になりがち。財団設立の志も強く打ち出しにくい。そこで08年度から始めたのがネットワーク形成事業だ。


分野を横断するネットワーク形成を支援する


 NPOなどの単独活動には、各種の助成があるが、関連する団体・個人がネットワークを構築する事業を対象とした助成制度は道内では見られなかった。そこでいくつかの活動を繋ぐプラットホームを形成する場を提供する助成制度を創設。北海道発の新しい公共の担い手(社会起業家)の育成を目的とし、分野横断的なネットワークを形成し解決に取り組むプロジェクトを支援する。

 主眼は人材育成とネットワーク構築。従来の助成と異なり、公募をせず、顔が見える関係の中で助成対象を決める。新たな事業創出・事業育成を対象とし、そこに財団としての志を込める。初年度5つのテーマを採択した。テーマ1は「健康自給率向上の実技市民講座」。テーマ2は「持続可能な地域社会形成に向けての新たな公的事業活動システムのあり方についての調査研究事業」。テーマ3は「民間企業と生産者による継続可能な特選品ブランド化計画〜3年かけて作り上げるビジネスモデル〜」。テーマ4は「十勝農業イノベーションフォーラム十勝の大地が地球を守る〜農地土壌への酸素蓄積による地球温暖化防止と地力増進〜」。テーマ5は「日本列島の原生的森林において、伐採・環境攪乱が森林生態系及び生物多様性に及ぼす影響評価」。各テーマが向こう3年間かけてネットワークを構築させ、担い手を生み出す。

 秋山理事長は、「できれば新年度に新しいテーマを一つ、再来年度にも一つ加えて行きたい」と語っている。

(次回から5つのテーマの活動状況をレポートする)

 

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