「玉玉石混交の放射能情報を正しく理解する
北海道の牛乳は危なくない(1)



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 「北海道の原乳も危ない」の小見出しを付けた記事が6月下旬発売の『週刊現代』に掲載された。だが、その主な内容は単に北大農場で飼育している牛の乳から放射性物質が検出されたというだけのもの。調べてみると、検出された放射線は問題にならない低レベルだった。その数値さえ示さず小見出しで「危ない」と危険を煽る、羊頭狗肉の記事だ。世間には放射能に関する玉石混交の情報が乱れ飛ぶ。何が正しくて何が間違っているのか。デマに惑わされない正しい判断力を身につけたいものだ。(文責・堀武雄)



「本当の数値」を示さず

故意に危機感を煽る記事

 『週刊現代』7月2日号に「本誌が独自調査 日本全国隠された『放射能汚染』地域 全国民必携これが本当の数値だ」の見出しが躍っていた。サブ見出しの中に「誰も言わない青森・北海道の危険」、そして小見出しに「北海道の原乳も危ない」。

 該当部分を引用してみよう。

「首都圏以外にも、注意すべき地域はある。/たとえば被災地より北、北海道・青森については放射能汚染が話題になることすらない。/しかし6月7日、北海道原子力環境センターより、『採取した降下物からヨウ素131、セシウム134および137が検出され、海産物のわかめからヨウ素131が検出された』とひっそり発表されている。/線量は微量とはいえ、見過ごしてはならない事実である。さらに、北海道大学の農場で採取されたホルスタインの原乳からも出た。/『4月18日にセシウム137が、5月9日にはセシウム134とヨウ素131が出ました。道内のお母さん方からの問い合わせも多いですし、北海道の牛乳を飲んでいる本州の方からも心配の声が届くので、これからも調査は続けていくつもりです』(北大大学院獣医学研究科放射線学教室・稲波修教授)」

 これだけだ。これでなぜ「危ない」などという扇情的な小見出しを付けなければならないのか。

 一読してわかるのは、「検出された」と書きながら、具体的な数値が示されていないことだ。この特集記事全体は、全国各地の放射能検出情報や、週現記者がサーベイメーター(線量計)を持って自ら計測した数値を示して構成しており、読者への判断材料を提供する記事になっている。ただ、北海道に関する部分に限って言えば、読者に判断材料を提供するどころか、意図的に重要な情報を隠して危機感を煽るために書いたとしか思えない。「これが本当の数値だ」と謳いながら、数値を示さない報道姿勢に、雑誌編集者として疑問を禁じえない。



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